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朝。太陽が空高くから辺りに暑苦しい熱線を放っている中、俺は必死にクワを片手に土を耕していた。
「まだ春だってのに暑いなぁ。めんどくさい……」
「えっさ、ほいさ、ふんぬるまっふーん!」
小さく文句を垂らす横で元気にわけのわからない掛け声を出しながら俺の倍の速さでクワを降り下ろすおっさん。
「おーい、この列終わったら今日は終わりだかんな!はよう終わらせてもらわんとー!」
「はいはーい!直ぐ終わらせまーす!」
人使いの荒い依頼だわ――心の中で呟きながらクワを降り下ろした。
† †
「お疲れ様だなー!今日は助かったわ!あんがとよ~」
数時間後、辺りに赤みが射してきた頃、俺は依頼を終え、おっさんの家に居た。
木で出来た丈夫とは言い難い家……だが、なんだか不思議と落ち着くようなゆったりとした部屋だ。
「はい、確かに6000円頂きましたっと。」
差し出された袋を受け取り、報酬を確認するとおっさんは笑顔で頷いて立ち上がる。
「あんがとな~。楓のお陰で助かったわぁ」
「こっちも仕事だから相応の働きはするって。
そんじゃ俺は帰らないとだから、また人手が要る時は連絡くれな!」
お礼を言われ、軽く返事をしたところで部屋を出た。
そしてそのまま走って自宅へと足を向ける。
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