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車は加速していった。どきどきしているのでローラーコースターに乗っているような気分だった。中沢はいつも無口だが、私はいつになく緊張して無口になってしまっていた。私は闇の中に飛ぶように後方に流れていく、南国特有の巨大な木のシルエットを見ていた。
今まで二人でいてこんなに緊張する事などなかった。
私たちは5年以上の友人だったけれど、その友人としての中沢と、今ここにいる中沢とは全く別だった。
もちろん二人きりでドライブする機会などなかったから。
中沢は運転しながら
「冷房がキツすぎない?」
とか
「ちょっとだけ、ぐるっと回ってみようか。」
とか言った。
そのたびに私は
「うん。」
とおとなしく頷いた。
私も今まで同期として中沢に接してきた私とは別人だった。
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