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「……よう、レイナス、こんな夜中まで起きてると、体に響くぞ」
『母さんの部屋』の前でそわそわしていたハバラクさんは、取り繕うように、ありふれた言葉を僕に掛ける。
「ハバラクさんも、そんなことしてないで部屋に戻った方がいいですよ、なんか外が騒がしい気がしますし」
「『気がする』だけで何も出来ないほど、おじさんは弱っちゃいないよ」
……この人、僕が子供だからって甘く見てる。
こんな場面を目撃されてるのに、まだ取り繕えると思ってる。
確かに僕は世間一般に比べてわずかばかり『劣っている』のは分かる、けど僕はこれでも16になる、それなりに物は考えられる、
用はハバラクさんは、母さんを連れていくに当たって『僕が邪魔』なんだ。
だから、ごまかせもしない場面でみっともなくあがいている。
「じゃあ宣言します、外が騒がしいです、一体外で何が起こっているんですか?」
この時、ハバラクさんの眉にシワが寄ったのを僕は見逃さなかった。
「……さあな、俺にはよくわからん」
「ならさっきの発言はなんですか?弱っちゃいないってどういう意味ですか?何か知っているからそういう言い方をしたんじゃないですか?」
言い切った、
少なくともこれで、話すことはなくとも取り繕うのはやめるはずだ。
たとえこれでしらを切っても、僕はまだ言ってない事がある。
ここまでいってしまえば、もう誤魔化すことすら出来ない。
「……思ったよりも賢しかったな」
ハバラクさんが何かを小声でつぶやく、
「あの、一体どうし――」
「……許せ」
ハバラクさんのその言葉を聞いた瞬間、全身に粟がたつような寒気がはしる。
それがハバラクさんから発せられた殺気によるものだと気付いた時にはすでに意識は刈り取られていた。
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