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「よーし、全員縛り終わったなー」
男は縛られた僕達をなめ回すように見る。
「命令通りにするんであればこのまま町に火をかけるだが、」
と、男は目の照準を僕に合わせる。
「キヒヒ、予定変更だ、てめえら!縛っている町人の首を撥ね飛ばせ!」
話を聞いている兵士たちの顔に動揺が走る。
無理もない、今こそ彼らは町人を縛り上げているが、それまでは良く面倒を見てもらっていた人達でもある。
彼らにとっては、町人を直接殺さない事が、唯一の救いだった、
なのに、それは一人の単なる気まぐれで侵されようとしている。
さすがに兵士たちも限界だったようで、次々と武器を捨て、男に詰め寄る鎧の音が聞こえる。
「ふざけるな!!誰がそんな真似をしなければならない!」
「この人達がどれだけいい人たちか、分からないからそんな事が言えるんだよ!」
「そもそも、通常だったら縛り上げる必要はなかったはずだ!それをあんたが『逃げられたら困る』とかいってわざわざ、せめてみんな寝入っている間に、楽に死なせてやりたかったのに……!」
飛び交う抗議の嵐に、男の手が剣にのびる。
柄を握り、その手から攻撃が下ろされる寸前、
「うるせえ!」
何者かが、その抗議の嵐、並びに男の剣を止める声を上げた。
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