9人が本棚に入れています
本棚に追加
「だって、あの船はコロニーにもいくんでしょ?だったらスターダストステージにも行けるじゃない」
栗色の両目で老人を見ながら、ジェルヴェは首を傾げる。
彼が行きたがるスターダストステージとは、国際宇宙ステーションを踏み台にして建造された商業コロニーの一つだ。
ミュージック関連に特化したコロニーで、雲の上から地球の音楽シーンをリードし続けている。
老人はうつむいて、目を閉じ、警笛に耳を澄ませた。
そして、なんて可哀想な子なんだろうと何度も心の中で呟いた。
この子は、まだ幼く分別もつかない。だから、あの船の正体も知らないのだ。
各コロニーから処分が決定したロボットを回収し、ここへ送り届けているゴミ収集船であることを…
「ジェルヴェや…こっちへおいで……」
老人は、顔は湖に向けたまま、ジェルヴェを手招きした。
ジェルヴェは幼子にありがちな、小さく跳ねるような歩みで老人のそばへ来て、腰かけた。
老人はジェルヴェの頭にそっと左手を置いた。
「スターダストステージに行けん代わりと言っては難だが、わしが昔話をしてやろう。お前の大好きな、シルヴェストルの話じゃ」
「ホント!?凄く聞きたい!」
老人は、かつてスターダストステージに君臨した男の武勇伝を聞かせながら、心に誓った。
せめて、この子が社会を知るまでは、希望を見せ続けてあげよう。
絶望が彼の心を染めてしまう前に、目指すべき希望を、彼に示したい。
なぜなら彼は…
普通ならあり得ない、処分区出身のアンドロイドなのだから。
最初のコメントを投稿しよう!