序章 ジェルヴェの夢

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「だって、あの船はコロニーにもいくんでしょ?だったらスターダストステージにも行けるじゃない」 栗色の両目で老人を見ながら、ジェルヴェは首を傾げる。 彼が行きたがるスターダストステージとは、国際宇宙ステーションを踏み台にして建造された商業コロニーの一つだ。 ミュージック関連に特化したコロニーで、雲の上から地球の音楽シーンをリードし続けている。 老人はうつむいて、目を閉じ、警笛に耳を澄ませた。 そして、なんて可哀想な子なんだろうと何度も心の中で呟いた。 この子は、まだ幼く分別もつかない。だから、あの船の正体も知らないのだ。 各コロニーから処分が決定したロボットを回収し、ここへ送り届けているゴミ収集船であることを… 「ジェルヴェや…こっちへおいで……」 老人は、顔は湖に向けたまま、ジェルヴェを手招きした。 ジェルヴェは幼子にありがちな、小さく跳ねるような歩みで老人のそばへ来て、腰かけた。 老人はジェルヴェの頭にそっと左手を置いた。 「スターダストステージに行けん代わりと言っては難だが、わしが昔話をしてやろう。お前の大好きな、シルヴェストルの話じゃ」 「ホント!?凄く聞きたい!」 老人は、かつてスターダストステージに君臨した男の武勇伝を聞かせながら、心に誓った。 せめて、この子が社会を知るまでは、希望を見せ続けてあげよう。 絶望が彼の心を染めてしまう前に、目指すべき希望を、彼に示したい。 なぜなら彼は… 普通ならあり得ない、処分区出身のアンドロイドなのだから。
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