かいなで

トイレという密室

しかし、開かない。
「おふぅっ！」
左側のモモに冷たい感触。
手がモモの内側をなでながら、俺の身体に向かってくる。
ドアを右手で叩く。
身体を押しつける。
開かない！
左側をなでながら向かってきた手は、モモのつけねまできていた。
顔を便器にむける。

白い左手の人差し指だけが小刻みで左右に動いていた。
これは……バカにしているのか？
それとも、出れないという合図なのか？
「ちょっ！と！」
付け根にある手が離れて、俺の股間を優しくつかんできた。
股を勢いよく閉じる。だが、長い腕は上から周り込んでいた。
目の前に左にやや傾いた前腕がある。
奥、便器には水タンクくらいの長さの左腕。
右手と左手の長さが違う？
我ながら冷静だよな。
「ふぉっ」
伸びてきた右手がムニムニと優しく、揉む様に動き出す。
俺は左手を伸ばして、右手を掴み力を。
「っっ――！」
目の前が白くなる。
声にならない悲鳴を上げた。
俺が左手に力を入れたと同時に力を入れて握って来やがった！
手を離すと力も緩む。
また、ムニムニと優しく動き出す。
便器には先ほどから人差し指を左右に動かす右手があった。
これは、大人しくしていれば危害を加えないという合図なのだろうか？