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薬品の匂いのする廊下を歩いていると、ドアが開いた部屋が見えた。
興味本位だった。
どんな人がいるんだろう、と通り過ぎる時にチラッと見るだけのつもりだった。
前を通り、チラりと見ると僕の考えは霧散した。
白くて広い病室、そこには部屋と同化してしまいそうなくらい白い子がいた。
白くて長い髪。
白髪のような白ではなく、雪のような透き通った白い髪。
清潔そうな部屋着。
顔は窓の方を向いていて見えないけど、部屋に満ちる空気、景色は浮世離れしている。
目にかかる前髪が邪魔になったのか、ほっそりとした指で耳にかけ直すその仕草さえ、美しい。
ほぅ、と感嘆にも似た息を吐いたので気が付いたのか、その子は僕の方を向いた。
「あら、お客様かしら?」
「あ、いえ、すみません」
血のように赤い瞳。
この部屋に浮かぶ唯一の色は人を惑わせるような魅惑の色だった。
後ろめたいことも、悪いこともないのについ謝ってしまったのはその人の空気にのまれてしまっているからか。
「少しお話しましょう?美味しい林檎があるの」
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