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竜、それは神の下僕と云われる生物。存在自体を世界が認めていない。竜の存在を認めるということはすなわち神の存在を認めると云うことになるからだ。人間至上主義のこの世界的には都合が悪いのだろう。
目の前には竜。周りは竜が吐いた炎に囲まれていて逃げ場は無い。
既に我が家だったモノには炎が纏わりついていた。きっとそれを灰に変えるまで解放する事は無いのだろう。
炎に囲まれると明るいと云うより眩しい。暑いと云うより熱い。
両親も既に炎の餌食に成ってしまった。ちょっと前まで苦しんでいたのだが、今ではどちらが母親でどちらが父親かも判別出来ない。
此処に在るのは僕と炎と竜。……そして僕と竜の間に立ち塞がった名前も知らぬ君。フードを被っているせいで顔は見えないが、身長からして同年代位だろうか。
僕は言った
僕には力が無い
君は言った
力?そんなモノは七割方必要無い。必要なのは最低限の勇気とほんの少しの『虚勢』さ!
そう言って君は、影を落とす事さえ許されないような竜の口から吐かれる業火、“ブレス”に正面から突っ込んでいった。
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