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誰だって、突然”おちる”時があるだろう。階段を踏み外して落ちたり、試験に落ちたり。
彼女も”おちる”ことを悩んでいた。
「君、いつも一生懸命で健気だよね。君がうちに入社してから、ずっと見てたんだ。」
「そうですか。それで?」
素っ気ない態度の彼女に、男は頭をかいて呆れた。
「”それで?”って……。まぁ、いいや。君、彼氏っているの?」
その一言で、彼女は頭を痛めた。
「私、恋愛も結婚も興味ないですから。」
「それじゃあ、勿体ないよ。人生、楽しまなきゃ。」
「要するに、あなたは私に対して恋に落ちたわけね。なら、今のうちに撤回したほうがいいし、諦めたほうがいいわよ。」
「残念だけど、俺は諦めないから。じゃ、また明日。」
そして、その日を境に彼は失踪した。後日、ニュースで彼の死が告げられた。
なぜか、彼女に恋した男達は命を落とす。彼女は、死ぬまでそれが悩みだった。
そんな彼女が、久し振りにときめいた。相手は既婚者で、新しい上司だった。
「あ、あのっ。片想いしていてもいいでしょうか?」
彼女は、却下されるのを覚悟で告白した。ところが、この上司は浮気性だった。
「”片想い”と言わずに、”両思い”でいいよ。」
彼女は、禁断の恋の領域に足を踏み入れてしまった。
しかし、彼女はその日を堺に失踪した。後日、彼女の死がニュースで伝えられた。彼女は、やっと”おちる”悩みから解放された。
ところが、今度は浮気性の上司が”おちる”悩みを抱えることとなった。上司に恋した女性達は、彼に告白すると必ず死んでいったからだ。
それ以来、上司の浮気癖は治った。
奇っ怪なことは、彼女に告白した男達も浮気性の男に告白した女達も、全く外傷が無く、体内から毒も検出されなかったそうだ。
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