1人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
社会人として生きることになれば、必ず一度くらいは”追われる”経験をするものだ。業種にもよるが、締め切り、ノルマ、時間等など。
そして、とある会社に勤めていた彼も追われていた。
「今日中に、終わらせなきゃ。今日中に、終わらせなきゃ。」
「大丈夫よ、今週中なら。」
「駄目なんだ。今日中に終わらせなきゃ。」
同僚の女子が、なだめた。しかし、彼は必死だった。
翌日以降、彼は会社に来なくなった。
人の噂も七十五日。とでもいうか、いつの間にか彼の事を気にする人はいなくなった。その頃に、別の女子社員が追われていた。
「ヤバい。マジ、ヤバい。早くしなきゃ。」
「別に、焦らなくて大丈夫よ。」
「駄目なの。今日の夕方までに終わらせないと。」
先輩の女子が、彼女をなだめた。やはり、彼女も焦っていた。
そして、彼女も翌日以降、会社には来なくなった。
実は、この会社では珍しくないことだった。なので、気味悪がって自主退社する社員は少なくない。
ある日の昼休み、ウワサ好きな女子社員が先輩に質問していた。
「先輩。確か、うちの会社って、締め切りとか期限とかノルマとかって無いですよね?」
「えぇ、無いわよ。それがどうしたの?」
「出勤しなくなった社員達って、何に追われてたんですか?」
「さぁ?考えたことも無いわ、そんなこと。ただ、真面目すぎただけなんじゃないの?」
「にしても、彼ら、異様でしたよ?」
「どうでもいいじゃない、そんなこと。それより、お昼食べに行きましょ。」
はたして、出勤しなくなった人達は、何に追われていたのでしょうかね?
未だその会社で勤める人達の誰かが、何かに追われていた。その後、出勤しなくなった人達の消息を誰も気にしていなかったため、彼らのその後は誰も知らない。
最初のコメントを投稿しよう!