0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
高い塀を右側に、道路を渡る信号へと歩みを進める。
右に曲がれる角で左に横断歩道があり、ちょうど青になったところで海斗が大通りに出る。
高い塀は姿を消したのに右側に黒い影が目にうつる。それは自分に向かって一直線に突っ込んできた。
「…っ!」
突っ込んできたそれは派手に後ろに飛び、こちらを正面に、しりもちをつく形で座り込んでいた。
自分も横断歩道側に押されたが、倒れるほどの衝撃ではなかった。むしろ、人ひとりの衝撃にしては軽すぎるくらいだった。
改めてぶつかったそれを見ると、それはグレーの制服で一目で女子だと分かった。結んでいるリボンが赤色なのは俺と同じ一年の証拠だ。
「大丈夫か?」
「う、うん。平気。」
消えそうな声で差し伸べた手を素直に受け取り、立ち上がる。
やはり、軽かった。
補助的な意味で体重がかからないのは分かっているが、それでも手に掛かった重みは、それよりはるかに軽かった。
最初のコメントを投稿しよう!