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(取り敢えず此処から出るか)
幸い出口の近くにいたので苦もなく出れるはず…だった。
それを一人の呼び掛けが止める。
「おいお前、確か火澄だな?」
声を掛けてきた方を見る。其所には学生服の男がいた。
(俺と同じ学校の奴か)
その男は襟に校章を着けていたので直ぐに同じ学校の奴だと判断できた。
(学年も一緒か、たしか何てい
ったけ?)
和矢はこの学生に見覚えがあった。
いや、一度この学生を見たら忘れる方が難しいとも言えなくもない。
それほど個性的な奴だ。まずは黒で少しテンパぎみの髪、整っているのかいないのか微妙な顔立ち、少くても美は付けられない少年で、身長が少し高いだけで体格も普通、だが親が金持ちなお陰でチヤホヤされて調子にのり人に高圧的な態度で接してくる。だが頭は悪く、有り体に言ってしまえば五月蝿い、ウザい、鬱陶しい、喧しい、キモいの三拍子ならぬ五拍子ときたものだ。
「聞いているのか、お前は火澄だろっと聞いているのだ。この僕が」
(鬱陶しいな、たしか名前は)
「おい」
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