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ぐしゃ、そんな気持ちの悪い音をたて、頭から叩き付けられた和矢が、糸の切れた人形のように力無く倒れる。
頭から出血し、流れ出た血が地面を濡らしていく。
その光景を見た由紀が駆け出そうするが、それを杏香が手で引き止める。
「なんでとめ――」
「落ち着いて、今出ていったら、貴女が殺されちゃう」
「でも!! 和矢さんが」
杏香の制止を無視し、駆け出そうとする由紀を見て杏香が呟いた。
「イメージ、水籠」
杏香の呟きと共に、由紀を薄い水の膜が包み込んだ。
「な!! 出して下さい!!」
由紀が叫びながら、水の膜を叩くが、薄い水の膜は割れる事は無かった。
「ごめんなさい。少しの間じっとしててください」
まだ膜を叩き付ける由紀を一瞥して、前へと進み出る。
「次は君の番かな?」
杏香が進み出るのを待っていたような口振りで、杏香に近付いてくる光に、杏香は苦笑を浮かべざるをえなかった。
「私の番かどうかは解りませんけど…………余所見をしてていいんですか?」
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