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ぴちょん、そんな音をたてて触れた何かが、鼻先を濡らした事で、気を失っていた柴珠は目を覚ました。
「うぅ、ここ、は?」
目を開けると、まず石で作られた天井が視界に映る。
次に、左右を確認する。左右にも石で作られた壁があるだけであった。
そして、反応の悪い身体をゆっくりと持ち上げていく。
「目覚めたか少女よ」
聞き覚えのある声がした後ろを振り向くと、フルフェイス型の仮面をした男が、壁に背を預け座っていた。
「刃!!」
その男、刃の姿を見た瞬間、重い身体を無視して跳ね起き、身構える。
「まぁ、待て少女よ。今の私には貴様と戦う意志はない」
「どういう事?」
座ったままの刃から殺意はおろか、敵意すら感じない事で、刃から離れた場所に柴珠も腰掛ける。
「簡単に言うならば、それどころではないと言う事だ。お互いにな」
「………それで?」
「ここはな、羽柴の奴が気紛れで作った地下迷宮だそうだ」
それがどうしたと思うが、柴珠は黙り刃の言葉を待つ。
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