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とにかく、他人の心配よりも、自分の事を考えなくてはと、柴珠は頭を切り替え、刃の問いに首肯する。
「私も似たようなものでな。そこでだ、この迷宮を抜け出すまで、協力をしないか?」
化け物級の実力を持つ刃の提案に、柴珠は一瞬我が耳を疑う。
「私の力なんて必要ないんじゃないの」
嫌味ではなく、ほぼ事実を述べる。
刃は剛魔、三鬼の剛鬼の眷属だ。その力は一刀をもって全てを斬り捨てるであろう。ましてや、事象系の字[時]を持っている。それこそ、一騎当千の戦士な筈だ。
柴珠の力など、今更必要あるまい。
そう思っていた柴珠に対して、刃は、またもや思い掛けない事を口にする。
「そうであるなら、楽だったのだがな」
刃はおもむろに立ち上がると、柴珠の方へと歩み寄ってく、そして、そこで初めて気づいた。
刃の衣服が所々、獣か何かに引き裂かれたように、破けているのだ。
「貴様を見つける前に、一度戦闘になってな。このざまだ」
柴珠と恵が二人掛かりでも、めぼしい手傷を負わせられなかった刃を、たった一度の戦闘でそこまでボロボロにするとは、もはや常軌を逸脱し過ぎている。
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