50人が本棚に入れています
本棚に追加
思わず固唾を呑む柴珠の前に立ち、スッと手を伸ばす刃の姿に、柴珠も覚悟を決め、その手をとった。
「………………」
「火澄さん。そ、その、私重くないですか?」
背中越しから届く瑠奈の声に、和矢は溜め息を一つ漏らす。
「さっきから同じ事しか言ってないぞ」
「そ、そうなんですけど、その」
瑠奈の煮え切らない態度に、もう一度溜め息がついて出た。
地面の崩落に巻き込まれた和矢達は、今出口を探して歩いているのだが、歩いているのは、和矢と、和矢のやや後ろを歩く由紀だけである。
先程から、同じ事を繰り返し訊く瑠奈は、崩落の際、足を挫いてしまい、今は和矢におぶられている。
「それに、重いからと言って、下ろす訳にもいかないだろ。解ったら静かにしてろ」
冷たい感じに聞こえるが、それが、和矢なりの優しさである事を知っている瑠奈は、それ以上何も言う事はなかった。
二人の会話が終わるのを待っていたかのように、次は由紀が口を開いた。
「さっきから迷わず歩いてますけど、どこに向かってるんですか?」
「出口だが?」
最初のコメントを投稿しよう!