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「え? 他の皆を探さないんですか?」
「ああ、風の流れで、出口と思しき場所が解るうちに脱出しておきたい」
「でも………」
尚も引き下がらない由紀に、和矢は歩を止め振り向く。
「でもじゃない」
有無を言わせぬ物言いに、由紀が押し黙るのを見て、和矢は再び歩き出した。
「あたた、くそ、たんこぶが出来てやがる」
地面の崩落の際、頭から着地した海兎は、頭に出来た大きなこぶを撫でながら歩いていた。
「はぁ、ついてねぇよな。こんなシチュで、女の子がいないなんて」
これが、物語りや恋愛シュミレーションなら、隣に可愛い女の子がいて、運命共同体として、仲良くなったり、励ましあったり、時に過ちを犯したりと、ハートフルな展開が待っている筈なのにと妄想する海兎。
だが、そんな妄想をする海兎の隣には誰もいない。
どんなに目を凝らしても、いないものはいない。
完全にボッチである。
「べ、別に、悔しくなんかないんだからね。勘違いしないでよね」
ボケてもツッコミを入れる仲間すらいない。
薄暗い通路を一人でとぼとぼと歩く。
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