50人が本棚に入れています
本棚に追加
「………………凄く惨め」
売れない芸人以上に惨めな現状に、うずくまり嘆く。
すると、どうだろうか、通路の先から一つの足音が聞こえてくる。
等々、幻聴まで聞こえてきたのかと、自身を憐れみながら顔を上げると、視線の先に人型のシルエットが見える。
(ああ、等々、幻覚まで見えるなんて、俺、もう駄目なんじゃね)
ましてや、見えたシルエットがフリフリのロリータとあっては、取り返しのつかない事になってるに違いない。
再び俯き嘆いていると、先程まで響いていた足音が途絶える。
次に、白のフリル付きスカートが、視界の端に映った。
「どこかいたいの?」
幼い舌足らずな声に顔を上げると、海兎は固まった。
「………………」
「だいじょうぶ、おにいちゃん?」
「あ、ああ、大丈夫、どこも痛くないよ」
少女の声で、我に返った海兎は、立ち上がると、ちょこんっと座っていた少女に手を差し出す。
「そうなの? なら、よかった」
少女は立ち上がった海兎の顔を見て、安心したように笑うと、差し伸ばされた手をとり、立ち上がる。
最初のコメントを投稿しよう!