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「ええと、俺は海兎、君の名前は?」
どうやら、虚しさのあまり、海兎が作り出した幻覚ではない少女に、自ら名乗ると、次に少女の名前を訊ねる。
「わたしは、ひな」
「可愛い名前だね。それで、ひなちゃんは、どうしてここにいるのかな?」
「えっと、いきなりじめんがなくなってね。おっこちちゃった。そしたらここに」
想像はしていた通りの展開に、海兎は頭を一掻きする。
「そっか、なら、一緒に出口を探そうか、ここは危ないかもしれないからね」
海兎の言葉に、ひなは一度、首を傾げ、まじまじと海兎を見詰めると、笑顔で頷く。
「うん。かいとおにいちゃんといっしょにいく」
ひなの笑顔に釣られ、海兎も微笑を浮かべると、ひなの小さな手をとり歩き出していく。
「……………」
「そんなに警戒しないでよ」
警戒心を隠そうともせず、杏香は黙々と歩いていく。
そして、その後ろを、苦笑いを浮かべ歩く女性の姿があった。
いや、女性と言うのは語弊があるかもしれない。
なぜなら。
「今は協力していても、何時殺されるか解らないんですから、警戒しない方がおかしいです」
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