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「あはは、僕も嫌われたものだね」
なぜなら、今杏香の後ろを歩いているのは、一週間と数日前に自分達を殺そうとして女装をしていた、妃隅光であるからだ。
「好かれる要素があると思ってるんですか?」
「手厳しいね」
相変わらず女装をしている光と杏香が協力関係にあるのは、杏香が崩落で落とされた先に、光も落とされたのが、きっかけであった。
そして、光は杏香にこう持ち掛けたのである。
『今は君をどうこうする意味はないから、ここを脱出するまで手を組まないかい?』
一度は殺そうとした人間に、こうも都合の良い事を言える精神に、杏香は呆れを通り越して、感嘆すら感じた。
杏香はこの時、非常に逡巡したものの、最後には、脱出しても今回は互いに手を出さないと言う盟約で手を組む事にしたのだ。
だからと言って警戒を怠る訳ではないのだが。
「それよりも、僕はちょっと訊きたい事があるんだけど」
黙々と歩き続ける杏香に、へらへらと笑いながら言う。
「……………何ですか?」
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