プロローグ 回り始める運命

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 「火澄君」  誰かが少年を呼んだ。  少年は自身を呼ぶ声のした方を見る。  そこには、少女が立っていた。  腰まで届くであろう長い黒髪で整った顔立ち、大抵の人間がこの少女を見れば美少女と言うであろう。  そんな少女がいた。  (これは、夢か)  少年は、すぐにこれが夢であることに気付く。  「杏香」  夢の中の少年が少女の名を呼ぶ。  少女は杏香というらしい。  少年が辺りを見回してみると、まだ人がいた。  だが、七人ぐらい居る中で、五人は靄が掛かっていて人であるとしか解らない。  解るのは、杏香ともう一人、肩まである長髪に切れ長の目、整った顔立ち、此方も美が付いても可笑しくない青年だ。  「英一、後は頼む」  「わかった。ではまた後で会おう」  青年、英一が言うと皆走り出した。  (こんな夢視るのも久しぶりだな)  そして夢はここで終わる。
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