記憶

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   恋愛なんか 下らない…。  暇つぶしに読んだラブコメ漫画はイケメン、美少女の狙い過ぎな展開にうんざり。  都合良く恋人関係に発展して、キスもその先にあるものまでアッサリ得られる。  下らない、あり得ないだろ。とばかり思っていた。  恋を馬鹿にしてるんじゃない。片想いくらいするさ。 でもそこから先に、進む気になんか、なれなかった。  7年も前になる、初恋の相手はとても仲が良くて、僕は毎日楽しかった。 でも、彼女は居なくなった。 町内の夏祭りの日、僕を振って。 「ごめんね…ごめんね」 確かに泣いていた。 その後、目撃した事実に身体が鉛になる。 同じクラスの男子と祭りをまわっていたのが、振られた5分後。 僕たちはあれから一度も会う事は無く、彼女はいつの間にか引越していて、僕の前から完全に姿を消した。  今でも鮮明に覚えているはずの記憶。  ただ、彼女の名前だけが、赤いフィルターにかけられたように思い出せない。  何度も記憶を掘り返そうとしても、名前だけは出て来なかった。  無理をすると頭が痛くなるので、僕はその記憶を封印して来た。  でも、その季節が来ると否応無く思い出してしまう。 それほどに、彼女の存在は当時の僕にとって大きかったのだろう。 時は経つのが早い。  現実に、何となくな気持ちで福祉の大学に通う事になった僕の周りは、忙しく動き始めた。 高卒の友人も半々が就職。 都会へ上京して行った奴、彼女をつくると意気込み合コンを開催する奴。  僕は色々な選択を諦め、失った。  仕方無い。人は幾つもの夢をすべて叶えるなど不可能だから。  これから得るものがあるのかどうかさえ、明確な回答もそれを示してくれる人間もいない中、新しい生活がやって来て。  僕は一人の女の子…。いや、大学生に恋をした。
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