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その日、仕事を終えた多々良田優馬(タタラダ ユウマ)がアパートに戻ると、階段の前に、いかにもガラの悪い風貌の男が2人、立ち話をしていた。
1人は白いスーツに派手な柄の赤いネクタイを合わせ、髪の毛をオールバックにセットして、尖った目つき。
そしてもう1人は、灰色のスーツに青い無地のネクタイを崩して付け、短く刈り上げた髪、細めのサングラスが印象的だ。
ただでさえ狭い階段なのに、真ん中にいるものだから邪魔で仕方がない。
しかし、優馬には声をかける勇気などないから、一旦その場を離れようと思ったその時だった。
優馬に気がついた白いスーツの男が、手に持った紙を見て、優馬を見て、また紙を見て、灰色のスーツの男に紙を指さしながら話しかけた。
灰色のスーツの男が細めのサングラス越しに、優馬を睨むように見る。
そして、「ああ……」とつぶやいて優馬に向かって歩を進めてきた。
ガラの悪い男2人が揃って近づいてくるものだから、優馬は戸惑いを隠せずおどおどしながら、後退する。
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