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会社でのあたしのポストは『主任』だ。
所謂、『中間管理職』だ。
この『中間管理職』というのは中々大変なポストなのだ。
「秋津君。
ちょっときて」
あたしは部下の秋津 卓(あきつ すぐる)を呼び出す。
他の社員達が何事かとヒソヒソ話をする。
「はい。
何でしょうか?」
あたしに呼び出され秋津はテクテクとあたしの前にくる。
黒髪に切れ長の目で眼鏡をかけたインテリ風な彼。
見た目とは裏腹に失敗が多く、よくドジを踏む。
そして大概貧乏くじを引き他の人の失敗も怒られる。
だけど彼はあまり気にする事もなくひょうひょうとしている。
背が高くムキムキなくせに失敗の多い彼を『木偶の坊』という奴もいる。
「このデザインのこの部分の色、指定と違うってクレームよ」
あたしは資料をトントンと指し指摘する。
「うわっ。
ホントだ」
ズレた眼鏡をなおしながら秋津は資料を凝視した。
「……何で確認しなかったのよ」
ため息混じりにあたしはいう。
「すみません……」
頭を深々と下げ秋津はあたしに謝罪する。
「あたしも気づかなかったから連帯責任ね。
とりあえず、手直しお願いね」
あたしは頭をポリポリとかいた。
「はい」
頭を上げ素直に返事し秋津は自分のデスクに戻った。
あたしは秋津が苦手だ。
昔のあたしに似てるから。
だけどあたしと違って考えが前向きな分救われた気がする。
「また失敗してやんの」
「いつも怒られて可哀相」
他の社員達は口々に秋津を批判する。
中には秋津を笑ってるものもいる。
秋津はというと、そんな回りを気にするでもなく黙々と仕事をしてる。
「はいはい。
皆も失敗しないようにしてね」
あたしはパチパチと二回程手を叩き社員達を静めた。
一瞬秋津と目が合ったが何となく知らん顔をした。
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