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「…………」
黙って秋津はあたしの言葉を聞いている。
「叱られたくなくて母に認められたくてあたしは必死だった。
だけど母はあたしを捨てた。
出来の悪いあたしは育児放棄され施設に入れられたの」
辛かった。
あたしは未就学だったからすぐに施設にはいった。
そこにしかあたしの居場所はなかった。
「……育児放棄……」
聞き慣れない言葉だったのだろう。
秋津はあたしの言葉を静かに繰り返した。
「秋津君を叱った時『母と一緒だ』と思ったの。
秋津君はあたしの人形じゃないのに」
デジャヴ。
あたしは母のようになりたくないと思っていた。
だけど秋津を叱ってるあたしは母と同じだった。
「……冬野主任は強がりすぎなんです」
あたしの顔を見て真面目に秋津は言う。
「秋津君?」
秋津、何を言ってるの?
あたしが……強がってる?
「俺のミスで俺を叱ってるくせに自分のせいだといつも自分を責めてる。
キャリアウーマンである事で自分を保とうとしてる」
秋津はあたしの事を見ていた。
いや、外だけでなく内も見てくれていたんだ……。
「知ったような事を……」
この時あたしは秋津に驚いていた。
秋津に心を見透かされ内心戸惑った。
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