後継ぎ

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お兄ちゃんが学校へ行っていて2階には娘とレティとちっぽがいた。 いつもはドタバタと騒いでいるのだが今日は静かだった。 お昼寝でもしたんだろうかと思い、私は2階に上がっていった。 階段を上がり、そうっと部屋を覗いてみた。 すぐにレティが私に気付き心細げな声で鳴きながら寄ってきた。 「どうしたの?まい、なにやってるの?」 私に背中を向けていた娘がびくっとして振り向いた。 手を後ろに回している。 その足元で何故ちっぽが耳を後ろにすぼめて小さくなっていた。 「まい、何にもしてないよ!」 娘は手を隠したまま、私に慌て言った。 怪しい…… 「何を隠してるのかな?」 「何にもない、ちっぽの髪の毛、切ってないもん!」 「え?髪の毛?」 私は急いで娘の後ろに回した手を取り上げた。 娘が持っていたもの。 それはお兄ちゃんの図画工作に使う文房具用のハサミだった。 そしてちっぽを見る。 「あーー!」 なんと、ちっぽの背中の毛があちこちまだらに切られていた。 まるでバンビのように。 .
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