115人が本棚に入れています
本棚に追加
ちっぽは相手が娘だったが、やはり怖かったのだろう。
娘に悪気はなかったのだと思う。
それが証拠に
「お父さんと一緒したかったの。ちっぽ、きれいきれいにしてあげたかったの。」
と言った。
お父さんと一緒……?
あー、そういうことね。
前にも書いたが主人は理容師だ。
仕事中の主人を子供たちは何度も見ている。
娘は主人が大好きだったし、それでちっぽを自分なりにきれいにしてやろうと思ったらしい。
だが悪いことは悪いこと。
ちっぽも怯えてしまっている。
私は娘からハサミを取り上げると、娘の視線まで腰を落として言った。
「まい、お父さんはお仕事でしてるんだよ。それにちっぽだって怖がってるでしょ?ハサミは危ないものなの。まいはまだ使っちゃダメだからね。ちっぽの毛だけで良かったけど、もし怪我でもしたら大変なことだったよ。」
「うん……。」
本当に毛だけで良かった。
もし肉にでも当たってたら……
私はちっぽを見た。
良かったね、ちっぽ……
ぷっ
私はちっぽのバンビ模様を見て思わず笑いそうになった。
.
最初のコメントを投稿しよう!