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暗く重い大地に私は立っていた。
足元に転がる黄金の細工は、かつての姿が想像できぬほどに、歪み、赤黒く変色している。あれほど強固であった黒の城壁もまた、瓦礫と化し、無数の亡骸の上にのしかかっていた。
遠くで響く轟音。最後に残っていた要の塔が崩れ落ちた音であろう。
もはや我々の勝利は揺らぐことはない。
そしてまた。
遠くで悲鳴があがり、やがて弱々しくなり、消える。
あと、どれくらいなのだろう。
結末が分かりきった戦ではあるが、あの悪魔達を殲滅するまで、私達の戦は終わらない。
からん、と小さな音。
見れば足元で倒れ伏している悪魔が、弱々しい吐息をもらしていた。何かを求めるように伸ばされた手。しかしその手を取るものは、ここには居ない。
わざわざ手を下すまでもない。
放っておけば、勝手に滅びる。
そう思い、踵を返しかけたところで、悪魔と目があった。
急速に力を無くしていくその瞳にあったのは…殺意や憎しみではなく、穏やかな光。
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