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目を閉じたところで、突然、近くに聞こえた声。とっさに体を反転させ、杖を突きつける。
気配なく現れた悪魔は、この場に似つかわしくない笑みを浮かべ、悠然と構えていた。
「そう殺気立つたなくても。知らない仲でもないだろう?」
杖を軽い動作で払うと、奴はゆっくりと私に近づく。
止まれ。止まれ…!
深い闇色の瞳からは、何も読み取れない。纏う雰囲気は凶悪なものではなく、むしろ静だ。この戦場に全く怯まず、仲間の死に怒りを感じるでもなく、ただただそこに居る。
そのことが、私は理解できない。
気づけば距離を取るように、無意識に半歩身を引いていた。
「お前は……何を……何を、知っている?!私を知っているのか?!」
問いかけたのは、ほとんど反射的であった。敵といちいち会話する必要もない。
明らかな私の動揺にも動じず、奴は小さく肩をすくめる。
「…なるほど。僕を覚えていないのか。そして自分すら見失っている。本当に君らしくないと思ったけど、こういうことだったんだね…光神」
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