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光神……かつて、そう呼ばれていた……?
その記憶は夢のように曖昧で朧気。
しかし、今、この惨劇の舞台にある自分は…いつ、どのようにして、舞台に上げられたのか、そもそも自分の存在が『何』なのか分からない。
…どこか遠くから自分をみている感覚。自分が二人あるような感覚。
それでもどちらの自分を信じるかは、はっきりとしている。
この利己的な殺戮は止めなくてはならない。
そう思う自分こそが、本物だ。
もう一人の自分が、目の前の敵を倒せと告げるが、無理矢理感情を抑えつけると、口早に問う。
「…あいつが何処にいるのか、知っているのでしょう」
「ああ、もちろん知っている。僕に知らないことはないよ」
悪魔…いや、魔人の中で、最も力を持つ魔王は総てを知っている。
だからこそ、私の元に来た。
この戦いの元凶たるあいつが動き出したのは、私にも責任がある。
「世界の裏側。逃げ始めた我が同胞を追っている。君が行くことのできない場所だ」
「なら、貴方があいつを止めてくれ!!貴方ならばできるでしょう!!」
しかし彼は小さく首を振った。僕はあくまでも観察者だからと呟く。
やはりその真意は分からない。
それは仲間を見捨ててでも、すべきことなのか。
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