0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
ケース1:空を飛びたい
「どらさーん! どらさーん!」
いつものように野蒜くんが叫びながらボクにしがみついてきた。また、なんらかの頼み事だろうなあ。めんどくさいなあ。イヤだなあ。
「どらさ~ん、空を自由に飛んでみたいよー」
やれやれな気分になったボクはため息まじりに返答してあげた。
「…はぁ~、仕方ないなー、♪ぱらぱぱっぱぱぱー、【ヘリウム風船】!」
ボクが渡してあげた風船に目をやった野蒜くんは理解の及んでいない様子で、
「……は?」なんて言いやがったので、ボクはしぶしぶ説明してあげた。実に面倒くさい。殴るか?
「取り敢えず、吸ってみればいいんじゃね?」
「それだと声が変わるだけでわ?」
「え、禁止薬物吸って飛ぶよりマシだろう?」
「“飛ぶ”の意味合いが完全に違ってますやん…」
すると、変にへこたれない精神性を有した野蒜くんは別のアプローチをしてきやがった。
「どらさ~ん、風船と薬物以外の方法で空が飛びたいよー」
うわあ、アバウトだなあー。まあでもそれなら手短な方法があるなあ。シンプルイズザベストというやつだ。
「仕方ないなー。♪~ぱらぱぱっぱぱぱー、【人間ロケット】!」
「着地の安全性を! 安全性を考慮して!」
そこまで面倒見切れん。一応、飛ぶことは出来る訳だから良いじゃないか、ええじゃないか。
そんなこちらの考慮を踏みにじるかのように要求が続くので、とっておきを出すことにした。
「しょうがないなー。ぱらぱぱっぱぱ~、オートマチック手術道具!!」
「……何で手術道具?」
「何でってw、これから生体強化用ナノマシーンの核(コア)を埋め込むんだけど? 飛ぶ力が欲しいんでしょ? 力が欲しいのならくれてやる!!」
「…いや、さすがにそこまでのものはいらないです。と言うかどらさん、昔出してくれた頭部装着型オートジャイロで空を散歩しに行こうよ」
「あ、悪い、ちょうど今、電池切れ。店に買いに行ったら品切で、入荷まで2、3ヵ月かかっちゃうんだと。他に使えそうなものは偶然、全部メンテナンス中なんよ。───あ、これがあったな」
「……うちわ?」
「正式には団扇型簡易人力浮遊機な」
最初のコメントを投稿しよう!