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「朝倉鎮。私と戦え」
一方的な言葉だった。対し、鎮は眉を寄せ、ため息を吐く。
「……またか」
「今日もみたいだねぇ。お嬢様も元気なもんだ」
憂鬱そうな鎮のため息。それに対し、正木は楽しそうに笑っている。
鎮は、視線を正木が『お嬢様』と呼ぶ相手に向けると、問いかけた。
「学生同士の私闘は禁じられているはずだが?」
「安心しろ。許可は頂いている。……笹ヶ峰教官」
「はいはい、っと」
声。呼んだ言葉に応じるように、新たな人物が現れた。
笹ヶ峰リア。
鎮たちの教官である女性だ。その女性は煙草をくわえ、紫煙をくゆらせながら、言葉を紡ぐ。
「立会人は私よ~、っと。朝倉、文句あるなら受け付けるけど?」
「言ったところで、受け付けても聞くかどうかは別でしょう?」
「わかってるじゃない」
笑うリア。鎮は、ふぅ、ともう一度息を吐く。すると、女性が眉をひそめた。
「朝倉鎮。ため息は自らの幸福を逃がすのだぞ?」
「ただの癖だ。……あと、フルネームで呼ぶな」
「ふむ。ならば鎮と呼ぶが、構わんか?」
「好きにしろ」
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