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「こうして出会えたのも、何かの縁だろ?」
「ここが学校に向かう途中の道で、お前が毎回待ち伏せをしていないなら確かに縁だろうな」
「冷たいねぇ?」
「事実だ」
息を吐き、鎮は言う。正木は、くくっ、と笑みを浮かべた。
「いやぁ、いいねぇ。その性格。面白い」
「それはこちらの台詞だな。お前、俺なんかといて楽しいのか」
「まあ、飽きはしないかねぇ?」
正木は肩を竦める。鎮は、そうか、と頷いただけだ。
鎮は決して友好的な性格ではない。別に人見知りするわけではないが、それとこれとは話が別である。
《ちから》を持つ者ということと、とある事情によって他人と距離を置いているのだが、正木はそんなこと、どこ吹く風といった様子だ。
大抵の者は、近寄りさえしないというのにーー
「なあ、鎮よ」
「…………何だ?」
「今日もお嬢様、いるかね?」
「…………」
お嬢様。その単語に、鎮は眉をひそめる。正木が笑った。
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