もう一つの意志

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「それに、感染した途端に……  みんな俺らの事を見ないようになって……  親も……友達も……」 世間も…… Willisには優しくは無い 「まぁ、だな……」 悲しいかな、子供がWillisになっても親がWillisに成れるわけじゃない リアルに『死』の危険を感じるのに心が耐えれなかったんだろう…… 「確かに、Willisじゃない奴は俺らに関わるのを嫌うわな……」 悲しい言葉だが、真実だった…… 「もう、どうして良いのか分からなくなって……」 たった1日で崩れた日常 周囲の変化に戸惑いながらこの二人は二人で生きているのだろう 「でも、お前らは運が良いぜ」 まるでこの世の終わりに立っているような二人に竜胆は言葉をかける 「どこがっすか……」 「普通、Willisになるのは百人に一人あたりだからな……  ダチがいる状態なんてそうそうありゃしない……」 「え……」 竜胆の言葉に二人はお互いを見る 「人間上を向けばキリがないが、下を見れば案外マシに思えるモンだ」 もし、Willisに成ったのが自分独りなら…… 愚痴る相手も話す相手も…… ましてや出来た喜びを分かち合う相手すら無い それは暗闇だった…… 「お前らはまだまだ幸せさ  だから人に当たるんじゃねぇよ」 「……うっす  竜胆さんは……一人だったんすか?  Willisになったのは……」 その言葉に竜胆は過去を思い出す…… 「さぁてね」 が 「忘れちまったさ  そんな昔の事は」 敢えてそれを奥底に沈める 「昔って……」 「ま、ともあれだ  もう、理不尽な暴力なんか振るうんじゃねぇぞ?  無意味な威圧もだ  そんなんやったところで、何が変わるでもねぇんだしな……」
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