『灯火~トモシビ~』

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『体は大丈夫かい?』 もう一人の男が、優しく囁く。 すると、固く閉じていた目をうっすらと開き、声の主を探そうとする。 しかし目が見えないのか、諦めたように溜め息をつき、動かしていた瞳を空に向けた。 「ああ。私は、もう死ぬのだな」 男は何も答えない。 「いいんだ。自分が一番分かっている。それに、私は死を待ち望んでいたのだから」 『君は死を望んでいるのかい?』 「この世界には何も無くなってしまった。人間はとても愚かな生き物だ。 何百年も前にあった核戦争による放射能の影響で、生き物の遺伝子が傷つけられてしまった。 人だけではない。鳥も、魚も、植物も……。 壊れた遺伝子は、元に戻ることはない。新しい命が産まれぬ世界になり、人々は僅かに残った物を取り合った」 そこで力なく息を吸い込み、そして微かに肩を揺らし笑った。 .
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