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「さて、さっぱりはしたが喉が渇いたままだな」
青年は、そう呟くとシュバルツの顔を横目で見やった。一方、少年は小さく頷き、それからゆっくり息を吐く。
「だね、冷たいものが飲みたいよ」
そう言うと細く息を吐き、少年は廊下の天井を見上げた。
「じゃ、昼飯ついでに何か飲みに行こうぜ? 最近噂の」
青年は、そこまで言ったところで話すことを止め、眼前に居る者の姿を見つめた。その者は、花束を抱えたシスターで、二人の存在に気付くなり会釈をする。
「こんにちは」
女性は、そう言って花束の位置を下げた。一方、シュバルツは挨拶を返し、アランは花を見つめて言葉を発した。
「そうか、今日は花の日か」
その言葉を聞いたシスターは頷き、軽く目を瞑って話し始める。
「ええ。本当は教派が違うのですが……子供達の為にと。そうだ、これも何かの縁ですから、この花束はお二人に差し上げます」
そう言うなり、シスターは花束をアランに手渡す。一方、青年はシスターに礼を言い、女性は会釈をして二人の前から立ち去った。この時、少年は花束を一瞥してから目線を落とし、小さな声を漏らしていく。
「子どものために苦しまず、互いに愛無き夫婦は、それはもはや人間ではない……か」
それを聞いたアランは首を傾げ、それからシュバルツの方に顔を向けた。
「何か言ったか?」
その問いに少年は首を振り、その仕草を見た者は花束を見下ろす。
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