152人が本棚に入れています
本棚に追加
孤児院を出た少年は、教会の管理する墓地へ向かっていた。彼は、墓地に到着すると全体をざっと見まわし、それから目を伏せて声を漏らす。
「俺のせいで、こうなったんだしね」
そう言ってから顔を上げ、シュバルツは墓地の奥へと歩みを進める。墓地は、教会から離れるほど雑草で覆われて行き、墓の数も少なくなっていった。しかし、シュバルツが向かう墓は未だ見当たらず、彼は無言で墓地を歩き続けていた。
数十分は歩いた頃、墓地の隅から少し離れた場所で少年は立ち止まる。彼は、そこで墓石に刻まれた名を確認すると腰を折り、手にしていた花を墓に供えた。
「白っぽい石に赤い花って、何だか思い出しちゃうな……あの日のこと」
そう呟くと目を瞑り、少年はゆっくり息を吐き出した。
「結局、貴女は俺を愛せなかった。元は、それだけのこと」
シュバルツは、そこまで言ったところで立ち上がり、どこか悲しそうに言葉を紡ぐ。
「だから、俺は長居しないよ? 俺は悪い子だから、さ」
そう言うなり踵を返し、彼は自らの家に戻って行った。
最初のコメントを投稿しよう!