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学校を後にした美月は、夕暮れ時の公園を1人歩いていた。
美月は昔から嫌なことや悩みがあると、この公園に立ち寄った。
ここは唯一、母との優しい想い出に触れられる場所だから…。
少し角が欠けたベンチに座り、美月は真白のことを考えた。
『そっか…。高校は外部の人も入るんだ…。私を知らない子が居るんだ…。…巻き込んだかな…。』
深く吐いた溜息は、近くを通り過ぎる救急車のサイレンで掻き消された。
『…そう言えば…今朝も救急車走ってたな…。』
そんなコトを考えながら陽の沈みかけた公園を後にしようと立ち上がる。
その時、遠くから悲鳴と走って来る音が聞こえた。
閑静な住宅街だ。その音はよく響き、どんどん公園に近づいて来た。
若い1人の女性が美月の前を通り過ぎる。その後を、長身の女が追い掛けて来た。
美月の前を通り過ぎる時、カシャンと何かが落ち、足下に転がった。
咄嗟にソレを拾い上げると、美月の細腕にズシリと重みがかかった。
鈍くひかる鉛の塊…。
銃だった。
思わず美月は乱暴にカバンの中にソレをしまった。
先程の女性達を探すと、トイレの方から声が聴こえる。
近くまで行くと、トイレまで逃げて力尽きた女性が泣き崩れていた。
そこへ、息一つきらさず追い掛けて来た長身の女がしゃがみ込む。
「もー足速いのねーアナタ。アタシ若くないんだからぁ、手こずらせちゃダメよぉ。」
その声色は、どこか無理に作り上げているようなトーンであった。
それに気付いた女性が不審そうな表情を浮かべると、女は二ッと不敵な笑みを見せ、
「あっ気付いちゃったぁ?アタシお・か・ま♪結構上手に出来てるでしょー?」
とウィンクを決めた。
オカマと打ち明けた人物を、さっきまで泣きじゃくっていた女性はキッと睨み付け、
「こんな時にふざけないでよ!こっちは命かかってんのよ!?」
と叫んだ。
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