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しかし、この真白という生徒は、隣のまだ生徒が来ていない席に座ると、どこの中学から来たのか、どこに住んでいるのか等、ニコニコと質問攻めしてくるのだ。
『煩わしい…。』
そう思った時、真白の後ろから机に随分年季の入ったカバンがトンッと置かれた。
「ごめんな。そこ、俺の席なんだ。」
髪をオレンジ色に染め、片耳にはいくつものピアスが付いた長身の男がニコッと爽やかな笑顔を見せる。よく見れば、口元にもピアスが付いていた。
その、いかにもな風貌はズバ抜けて目立ち、クラスの女子は「カッコいい!」と囁き合った。
「あっゴメンね!」
真白が席を立つと、美月はようやく解放されると溜息を吐いた。
しかし、真白は自分の席に戻る前にクルリと振り返り、「あっ美月ちゃん。後でアドレス交換しよーネ!」とニコニコとてを振っていた。
返事をせずに静かに溜息を吐く美月の横で、クスッと笑う声が聞こえる。
チャラチャラした隣の男を見ると、美月の顔を覗き込む様な体勢とり、人懐こい笑顔を見せていた。
「俺、桐生 隼人。よろしくネ♪美月ちゃん。」
もうこれ以上人と関わるのに疲れた美月は、ペコっと頭だけ下げ、窓の方に顔を背けた。
そんな態度を取られても、真白同様隼人も気を悪くすることなくむしろ楽しいコトでもあるかの様に鼻歌をかすかに歌った。
チャイムが鳴り、それぞれ席に着く。
担任が自己紹介をし、オリエンテーションを始めたのを聞きながら、美月は窓の外をボーッと見つめる。
校門前の道路を、また救急車が通り過ぎて行った。
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