眠り王子

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「おい河合!俺の授業はそんなにつまらないか?!」 パシッ 「いってぇー!体罰だぞ!」 そんないつものやり取りに、教室は笑いに包まれる。 授業が終わり、教室が騒がしくなると、隣の席の河合は、ふてくされた顔で私の方を向く。 「なんで起こしてくれなかったんだよー」 「いつも寝てるあんたが悪いんでしょ。おしゃべりするなって巻き添え食らう私の身にもなりなさいよね。」 これもいつものやりとり。 彼は、あの先生の授業は、いつも寝てる。 何度か起こしたことはあるが、その度に起こしてあげた私まで怒られるのだ。 でも、起こさないのはそれだけが理由ではない。 彼が寝る時は、いつも私の方に顔を向ける。 一部で王子と呼ばれる容姿の彼は、長いまつげを伏せて、薄めの唇を少し開いて。 その無防備な寝顔が可愛くて、 起こすのがもったいないんだ。 恒例の言い合いだって、楽しく思っている自分がいる。 .
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