第1章

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「10点」 さつきが、呆れたように私を見て言った。 「10点て、何が?」 「今の梨奈の、一連の行動が。 かろうじて挨拶はしたみたいだけど、せっかく好きな人が自分の席の近くに来てくれて、話しかけるチャンスなのに、逃げてきてどうするの?」 「うう、分かってる。分かってるんだけど、どんどんフリーズしてきて……早くしないと頷くことも出来なくなりそうだったから……」 「そのフリーズする癖、何とかしないとね。 そんなんじゃ、いくら好きな人が出来ても自分の気持ちも伝えられないし、もし付き合ったとしてもキスも出来ないよ。」 「……キ…キスって……」 朝から刺激的なさつきの発言に、動揺してしまう。 「え?だって梨奈、加瀬くんのことが好きなんでしょ。」 「さつき、声大きい。」 「ごめん。でもさ、」 さつきは、声をひそめて言った。 「好きなら、いつか付き合いたいと思わないの?」 「それは、思うけど……」 「だったら、キスすることも想定しとかないと。フリーズしたままじゃ、加瀬くんがかわいそうだよ。」 「かわいそう?」 「だって、甘いキスをしようと思ったら……」 さつきの話の途中で、ガラガラと教室の前の扉が開いて担任の小西先生が入って来て、私は慌てて自分の席に戻った。
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