第1章

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椅子に座って机の上に両手を出すと、端っこの方が温かいことに気づいた。 ……ここ…さっきまで加瀬くんが手、置いてたから……。 そっとその場所に手のひらを重ねる。 トクン、と心臓が跳ねる。 あったかい。 加瀬くんと手を繋いだら、こんな風にあったかいのかな。 窓際に近い席に座る加瀬くんを、斜め後ろの方からそっと眺める。 ……あ…やだ…。 さつきが変なこと言うから、 『甘いキス』とか言うから、加瀬くんを見るのがいつもより恥ずかしくなっちゃう。 私は制服のブラウスを、きゅっと握った。 ……また、ドキドキしてきちゃった。 胸のトクトク、て音が手に直接響いてきて、余計にドキドキが大きく感じられる。 すると隣りの席の長谷部くんが、私の机を指先でトントンと叩いた。 「気分、悪いの?」 「え」 「顔赤いし、胸押さえてるから」 「あ、ううん。違うの、これはちょっと……」 ……ちょっと、加瀬くんを見てドキドキしてました、とは言えないし……。
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