第三項目 戦火の灯火

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 いや……そもそも僕はどうしてこの事をここにいる皆に伝えていないのだろう? もし伝えれば、きっと僕達が元の世界に帰るための手助けになるはずだ。  でも何故かその行為を僕は孝一に控えるよう言われている。今すぐにでも異世界から来て、元の世界に帰るために志願兵になって皇女様に合おうとしている事を伝え……いや駄目だ、完全に怪しい人だこれ。  僕ならまずそんな素性の知れない頭のおかしい人間はまず信用しない。 「ユウイチ? どうしたんだい難しい顔をして」 「え? んん? ああ、何でもないよ」 「確かに起きる筈の戦争が内部で起こる事だったり、それを促そうとしている人物もいるかもしれないという事にショックを受けるのは仕方ないけど」 「いや、そこまでは僕も知っていたからさ、特に驚きはないんだけど」  その事より、その答えに行き着いた君達に僕は驚いているのだが。 「ユウイチやっぱりさすがだね。その事に独自で気付いてたなんて……でもそうなるとユウイチは気付いていながら兵に志願したって事かい?」 「えっと……まあね、気付いたのは孝一だけど。それで正義感の強すぎる僕達は居ても立ってもいられなくなって原因を探ろうと兵に志願したんだ」 「そうだったのか……」  少し苦しすぎる言い方だったかもしれないが、下手にこちらの素性を明かすより遥かにマシなはずだ。 「知っていた……か、気付いたではなく……知っていた……ね」  するとそこでマスターが意味ありげな言葉を僕に対して呟き、とっさに僕はマスターに視線を合わせる。  マスターの口元は笑っていたが、視線は鋭く、只僕だけを射抜いていた。まるで何かを疑っているように。 「でもまあ……あんたが重い腰を上げて出てきたって事は、只の戦争ではないのは確かだろう?」  マスターは僕から視線を外すと、一度口元でふっと笑い、そう言いながら今度は壁ドンババアが座っている方向を向いた。  なんだ、気付いていたの僕だけじゃなかったのか。 「なんだい……私がいるのに全然話しかけてくれないから、忘れられてるのかと思ったよ」 「忘れる訳ないだろう、そんな図体のでかいオバサンの存在」 「殺されたいのかい?」  マスターは笑いながら気さくに壁ドンババアに話しかける。
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