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「っへ……」
城へ向かおうと僕が先陣をきって歩き始めた途端、名前も覚えていない若くて細い体付きのチンピラ隊員の一人が、僕の足を引っ掛けようと右足を出す。
無論、突然足を出されたので回避する事が出来ず、僕は見事に引っ掛かり転びそうになる……と見せかけた。
実は僕は見た目がおとなしそうだからか、昔からこの手の嫌がらせを受け続けてたので対抗する術を身につけている。
足が引っ掛かって体のバランスを失う前に、すぐ自身の体を前へと倒して手を地面につけ、後はカポエイラ独特の腰の回転を使って逆立ち状態で足を引っ掛けてきた相手を……
「おげっ!?」
蹴るだけ。蹴り終わった後、蹴る時に利用した回転力をそのまま使って体のバランスを保ち、地面につけた手を押して跳ね起き上がった。
「へぇ……」
感心したのか、怖そうな女性事ベインさんはそう声をあげる。
「さ……さすが隊長!」
バビロスさんはひたすら感動しながら、僕に足を引っ掛けてきた隊員にすぐさま飛びつき、アームロックを掛けて締め上げていた。
「えっと……バビロスさん」
「バビロス隊員とお呼びください!」
「えっとバビロス隊員、離してやって」
僕がそうバビロスさんに命令すると、バビロスさんは忠実に従いすぐさまチンピラ隊員の首を離してくれた。そのまま僕は倒れるチンピラ隊員に近付き、しゃがむ。
「あの、悪いんだけど一応隊だからさ、隊員同士で上手く行動出来なかったらその隊の責任になって自分に返って来るんだから、そういう示しのつかない行動はやめてくれないかな?」
「え……あ、は、はい!」
さすがにここで少しくらい怒っておかないと反省しないと思ったので、最後だけちょっと声のトーンを低くして叱った。
そしてそのまま立ち上がってお城に向かうと、さすがに皆少しは隊長として見直してくれたのか、素直に僕の後をついて来てくれた。
「ねぇねぇ隊長隊長! さっきの技……どうやってやるの?」
「努力の賜物かな……ルーネの得意分野だと思うけど?」
その後は特にこれと言ったイベントというかアクシデントは起きなかった。
何かあったとすれば、城に到着した時、既に隊をまとめきったボルズが威圧感たっぷりに腕を組みながら立ち尽くし、その前を隊員が冷や汗をたっぷり浮かべながら整列してた事くらいだろう。
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