第三項目 戦火の灯火

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「じゃあねユウイチ!」  そう言って、太陽並みの笑顔で僕に手を振ってルーネは走り去って行く。ルーネが帰ると、なんだか一日が終わった気分になるのは何故だろう。 「しかし本当太陽みたいな笑顔だよなー……ルーネ」 「ああ、そして素晴らしい二つの果実を持っている」 「誰だ!?」 「俺だ」 「ああ……孝一か」  声で誰なのかを知りつつも振り向くと、案の定そこにいたのは孝一だった。何でわざわざルーネがいなくなった後で出てきたのかは謎だけど。 「孝一……僕は予定通り少し階級が上の従長になったよ」 「……そうか」 「孝一は……なんていうか残念だったね、名前呼ばれてなかったし……不合格で」 「ああ、俺兵じゃなくて王宮学者として働く事になったから」 「WHY?」 「いや、まじで本当、俺はもういつでも城に入れる」 「ごめん、ちょっと前までこの調子でいけばいつかは城内に入れるようになるって考えてた僕の中の葛藤を返してくれませんか?」 「いや……そんな事を言われてもな」  言葉ではこんな事を言っている僕だが、内心かなり喜んでるのは秘密だ。  元々城に入るのは只の前提条件でしかなかった、まず城に入れないとどうしようもない、けれど城に入れるかどうかもわからない状態。  そこでその前提条件である城に入る目的を達成する事が出来たのだ、喜ばない訳がない。 「今までずっと何してたの?」 「ん? 中でこの城の学者達に俺達の世界の学力を見せ付けてた」 「それで学者になれたの?」 「ああ、説明しながら実験で起こる現象を見せてたら『なんという事だ……』とか言って驚愕しながらぜひこの城に留まって欲しいとか言ってな」  ん? 待て、これだったら僕はわざわざ兵になる必要なかったんじゃ……兵になろうとした成り行きでこうなった訳だけど。  うわ、僕従長になっちゃったよ、責任重いよ、やめられないよ。 「でもどうしよう孝一、僕……兵としての仕事があるから城内を探る事が出来ないよ」 「まあ俺と一緒に毎日という訳にはいかなくなるな、なんならこれから城の中を散策しに行くか?」  あれ? 孝一さんそんな自分の家に招待するみたいな感覚でいいんですか? ていうかどんだけ地位高くなってるの? 一体何の知識を見せびらかしたらそうなったの?
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