第三項目 戦火の灯火

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 半分冗談で言っていたと思っていたら、マジで僕を引き連れてそのまま城内へと入る事が出来たので焦った。  途中、今日僕達に設備案内をしてくれた騎士に「おい、シンドウ従長! 今日言われた事を忘れたか!」と怒られそうになったが、孝一の「これは俺の連れだ」と懐に隠し持っていた王宮学者を意味する勲章を見せると……「これはこれは! 昨日配属されたばかりのカトウ殿ではありませぬか! いや、知り合いとは知らず失礼致しました! シンドウ従長、粗相のないようにな」と、圧倒的な権力の違いを見せ付けられ、結局僕は何のために頑張って適正検査を受けて従長になったのかわからなくなった。 「うわぁ……激萎え」 「どうした新藤?」 「いや、僕もあの時学力を見せ付けとけば良かったかなって、多分僕程度の学力でもいけたでしょ?」 「いや、無理だろ。それにそんなに王宮学者に迎えるほど学者の席は空いていない……この王宮学者一人用なんだ」  そんなうざい言葉を掛けられながら、確かに孝一に比べたら僕は学力が劣るため、僕は黙って孝一の後に続く。 「おや! カトウ殿ではありませんか!」  暫く歩いていると、今度は孝一と同じく王宮学者の一人がフランクに孝一に話しかけてきた。 「いやはや昨日は参りましたよ……まさか我々が普段存在している空気中に『圧力』が存在するとは」  え? そんな初歩的な事で感動しちゃったのこの人達。 「気圧は、環境さえ整えればあげる事も下げる事も出来ます。生命エネルギーなんて存在しない事……理解していただけましたか?」 「ああ、どうやら我々は君に比べたら随分と浅はかな考えを持っていたよ……ところでそちらの方は……? 勲章を見た感じ志願兵の者かと覗いますが」  学者はそう言いながら僕を怪しげな目で見始める。糞孝一と僕とでこんなにも扱いと態度が違うとは。 「俺と一緒に旅をしてた者だ。彼は兵になったみたいだがな、一応知識は俺と近いものを持っている…………たぶん」  良いフォローを入れてくれたと思ったら、小声でたぶんって言いやがった。折角僕も学者に昇格するチャンスだったかもしれないのに。……まあ無理か。
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