第三項目 戦火の灯火

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「皇女様にお会いする事は出来ないのですか?」 「……何かご用件でもあるのですかな?」 「いえ……他国でも有名な皇女様ですから一目見てみたいなと思いまして」 「そうでしたか……残念ながら今はお会いする事は出来ないのです」 「どうしてですか?」 「今はご存知の通り、戦争の待機状態にあります。皇女様は国の象徴……暗殺者には最も気を配らないといけないのです。無論疑うつもりはありませんが、万が一の可能性を考えないといけないので」  なるほど……確かに戦争時に一番危険視しないといけないのは暗殺者だ、一応夢世封書に皇女様は暗殺される事なく最後まで登場するから暗殺されない事を知っているけど、普通はそれに注意する。  ここで無理に会いたいと言えば、逆に疑われるのは僕という事か。 「いや、別に大丈夫、平和になった時にまた会う事にします、ありがとうございました」 「いえ、お役に立てず申し訳ない」  その後学者と別れ、僕と孝一だけで城内を歩いて回った。  別に今すぐ皇女様に会えないとしても、今日は多くの収穫を得た、城内を探索できるようになっただけでも今日は十分だろう。 「孝一、そういえば今日はマスターの家に帰ってくるの?」 「ああ、今日は帰る。昨日は学者達に解説を施していたから帰れなかったけどな。俺は意外と教師に向いてるのかもしれない」  向いてる所か、もう教師になれるんじゃないの? っと思ったりもしたがやっぱり教師の道はそんな単純ではないのかもしれない。迂闊な考えは失礼になるしね。 「今日はもう引き上げない? そろそろマスターやケイト達も心配する時間だろうし、まあ今帰っても怖いおっさん達が待ってるんだけどね」  城内を探索している間にすっかり日は落ち、辺りは月の光と星の光に照らされた独特の雰囲気のある夜の暗さになっていた。  城内にいる兵士達も、交代で帰って行く人や、来たばかりの人で行き交い、酒を飲んで一日の疲れを取っている者もいる始末、ばれたらクビだろあれ。 「そうだな……学者は城内に泊まり込む事が許されてるから何時でも留まれるが、只の兵士の新藤がいたんじゃ怪しまれるしな」  なんか今言葉にむかつくフレーズがあったような気がしたが、まあ今日の成果が大きいので見逃すとしよう。
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