第三項目 戦火の灯火

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「荷物を取ってくる、学者しか入れない部屋にあるからそこで待っててくれ」 「わかった」  孝一がいないと他の兵に怪しまれたりしないか心配だが、こんなに兵が行き交ってるし少しくらいの間は一人でも大丈夫だろう。  と、考えていた時期が僕にもありました。  孝一がいなくなってかれこれ二十分は経っただろうか?  兵士の行き交いは終了し、夜の見張りの兵士が配置について不審者がいないかどうか廊下を歩き回っている。  僕はというと、見つかれば確実に怪しまれるため、さっきまで僕がいた場所の近くにある、二階へと上がる石階段の下の隙間部分に隠れていた。  さっきから見張りの兵士が目の前を通っていくため、見つかりやしないかとひやひやしている所だ。  さすが孝一、見事な放置プレイ。だが僕はMじゃないので興奮したりはしない、むしろ殺意的な意味で興奮する。  帰ろうにもこの場所から城の出口まで結構な距離があるし……無駄に広いんだよこのお城。 「孝一……戻ってきたらぶん殴る」  そう決意して、僕は階段下の隙間に挟まれながら拳を握り締めた。  そんなどうでもいい事を考えていた時だった。 「……子供?」  今僕がいる場所から見える視界の中に、兵士に見つからないようにこそこそと歩いている……幼女を見つけた。  その幼女は妙に小奇麗で、白いドレスの様な服を身につけていて、月の光を綺麗に反射する白い肌と金色の髪を持っている。  品のある顔立ちをしており、優しそうな目元は、怪しい行動をしている人物だが不審者ではない事を物語っていた。 「怪しいな……」  怪しさで言えば圧倒的に僕の方が上なのだろうけど、それはおいといてこんな時間に子供が何をしているのだろう?  見た目からして多分どっかの貴族、まあ騎士の娘さんなのだろうけど……こっそり父親に会いに来たとか? 健気だねぇ。  でも今回の戦争を起こそうとしてる者の仲間という可能性だってある。元の世界に帰るには怪しい人物なら誰だって疑ってかからないといけない。  まあ怪しさならマスターとボルズも負けてはいないけど……
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