第四項目 戦火

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「あなたから不思議な……何かに包まれたような不思議な力を感じます」 「そうですか」 「はい……」  ……しまった、この子怪しいと思ったら電波系の少女だったのか。  不思議な力ってなんですか? 放屁する力ですか? ああなるほど、放屁による僕の体周辺に立ち込める匂いを不思議な力と勘違いしているのか。  いや待て、僕のおならってそんな長時間臭いのか? ありえない、もしありえたら心が折れる。 「まあとりあえず……君は誰なの? ここで何してるの?」  僕がそう聞くと、金髪の少女は口を閉じて沈黙し、 「……なるほど、そうですか」  そう呟いて先程金髪の少女が移動しようとしていた方向に少女は歩き始めた。 「ちょ、どこ行くの?」 「行きたい場所があります、私を助けてくれるのでしょう? 護衛をお願いしますね」  護衛って……一応僕も不審者扱いになるんだけど、逆に護衛してほしい。でも……こんなに堂々と行動してて、僕に見つかっても焦ったり悪びれたりしない所を見ると、裏で戦争を起こそうとしている悪い奴ではなさそうだ。  というよりそもそも子供だから疑う余地すらないじゃないか。 「ここに来たかったのか?」 「はい、ここに来ると気分が落ち着きます、誰かに守られてるような……安心した気持ちになるんです」  金髪の少女に同行して辿り着いた場所は、草や木や花が生い茂る、城内庭園だった。  今の口ぶりからすると、この少女はこの城を知り尽くしているのがわかる。この城の関係者なのは間違いない。  でもならどうしてわざわざこそこそ移動する必要があったのだろうか? そもそもこんな時間にこの少女は何をしたいのだろう? 「ここまで護衛、ありがとうございます」 「いや……特に何もしなかったけど」  金髪の少女はそう言うと、庭園にあったベンチに腰をかけた。 「お隣……どうぞ」 「え? あ、はい」 「あなたは……この国の現状をどう思っていますか?」 「え?」  ベンチに座って沈黙が数十秒続いた後、金髪の少女はそう口を開いて呟いた。
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