第四項目 戦火

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「沈静しに行く、十番隊は私の部隊について来い!」 「っは!」  僕の部隊にいる全員が胸に手を当てて敬礼を英雄ハロルドに向けて行う。  一応英雄ハロルドにも、ルーネの皇女様信者みたいなのがたくさんいるため、ちゃんと敬語で尚且つ様をつけないと信者にぼこられるとの事。故に仕方がなく序列通りに従っているという訳だ。 「隊長! ……後で皇女様に会った時の話、ちゃんと聞かせてね」 「え? あ、うん」  ちなみに皇女様を幼女だとか言うとルーネが怒り出すので、一応皇女様にも敬意を持ってるような喋り方をしている。  暴動が起きたと報告のあった場所に向かうと、思った以上に激しい攻防戦が繰り広げられていた。  魔族が住むと言われている区域の方角から、次々に魔族の人達がやってくる。  負傷した魔族がすぐさま魔族の住む区域に下がって行くのを見た所、チームを組んで前もって奇襲する作戦を練っていた事が予想できた。  対する人の皆は、子供を優先的に退避させ、奇襲によって怪我を負った子供や女性を運ぶために、男性だけじゃなく女性まで前線に立って魔族の連中に対抗している。 「十番隊! ルーネとバビロスは子供や女性の退避の誘導と護衛を! それ以外は抗戦だ! 相手の武装を無効化するだけでいい! 殺したりするのは駄目だ!」  到着するや否や、あまりにも悲惨な光景に僕は無意識にそう口を開いて指示を出していた。  殺したりするのは駄目って言うのは、これ以上関係を悪化させるのは良くないと考えたから……というのは言い訳で、命を奪うような戦いを僕自身が避けてるだけ。  幸い、まだどちらも死傷者は出てない様子だ。 「良い指示だ! ここはまかせたぞシンドウ従長!」  ハロルドはそう叫ぶと、自分の隊員を引き連れて魔族の連中が固まっている方向へ飛び込んでいった。  ……さすが英雄、何でも以前に起きた戦争で、たった二人で三十人も倒したとの噂らしい。  そのもう一人が魔族の英雄らしいのだが……とにかく二人で三十人は凄すぎる。
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